システム例示

データベース利用マニュアル

地震国である我が国の建築基準法では、極稀に発生する地震に対して人命の確保を目標としているものの、近年の地震被害において、莫大な修復費用(経済損失)が生じるケースや、設計上考慮されていない損傷が建物部位に生じ、建物所有者が生活困窮(機能損失)に陥る事態が見られている。

このことから、今後の性能評価型耐震設計においては、従来の構造設計に見られるような耐震安全性だけを検討するのではなく、地震被害を受けた建築物が地震前の機能レベルに復旧するまでを考慮した機能回復性の検討も併せて行う必要がある。このため、機能回復性に関する目標性能を設けた設計手法が必要と考え、それを実現するためのツールとして損傷評価データベース(以下損傷評価DB)、修復性評価データベース(以下修復性評価DB)、機能性評価データベース(以下機能性評価DB)の作成を行った。

ここで提案する評価手法は、従来の構造設計で用いられる構造物のモデル化を行った上で、時刻歴応答解析などにより求めらる応答値を用いて、損傷評価DB、修復性評価DB、機能性評価DBを用いて建築物の機能回復性を評価するものである。よってデータベース(以下DB)の利用者は、はじめに適切な建築物のモデル化および応答値の算定が必要となる。

DBの具体の利用ステップについては後述するが、設計者は、地震が発生した時に生じる柱や梁などの部材への損傷量(部材表面に発生するひび割れやコンクリート剥落などの損傷量)を損傷評価DBを使って算定し、修復性評価DBによりその損傷を修復するためにかかる修復費用・修復時間を算定すること、また、機能性評価DBにより、地震後に各部位が損傷を受けたことによって生じる不具合事象(どう困るか)や、失われる建築物の機能を推定することができる。

しかし本研究課題では、DBのフォーマットの決定およびデータ収集方法の例示を当面の目的としているため、現時点で作成されている各DBではデータが不足しているため、実際に利用する際に補いきれない部分がある。現時点において評価しようとする部位のデータが不足している場合は、利用者の工学的判断おいて値を安全側に仮定するなどして利用されたい。

また言うまでも無く、今後の研究によりデータをさらに整備し、最終的には修復費用や修復時間、不具合事象や機能低下等を考慮した機能性評価指標を確立し、生活困窮度や事業継続性の評価をランク付けすることにより、その結果をユーザを含む建築物の所有者に分かりやすく説明することは重要であり、本研究課題で開発した新たな構造性能評価システムがさらに有効に利用されることになるだろう。

なお本DBから算定される修復費用・時間などは、修復の困難度を工学的に評価することを目的としているため、地震後の実際の修復費用・時間を保証するものではない。現時点では、学術研究用として開発されており、宣伝および商用目的での本DBの利用は遠慮されたい。

DB利用マニュアルでは、以下のステップを踏んでDBの利用者に容易に利用方法を理解してもらえるような構成としている。具体的には以下のstepを参照されたい。

step1 損傷評価DBの見方 (損傷評価DBの概要・構成)  [PDF : 353KB]
step2 損傷評価DBから修復性評価DBへの流れ(修復費用・修復時間の算定)  [PDF : 393KB]
step3 損傷評価DBから機能性評価DBへの流れ(建築物の機能回復性の推定)  [PDF : 1.27MB]

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