プロジェクトについて
近年の地震被害では,近年建設された建築物が地震の揺れによって倒壊する被害は少なくなっていますが,非構造部材や設備機器などが損傷することによって,建築物を継続的に使用することができなくなる事例が見られています。また,建築物の倒壊は免れても,部材の損傷が大きいことで莫大な修復費用を必要とする事例も見られます。一方,建築物の設計時点で,地震後に建築物を継続使用できるかどうかといったユーザの関心の高い項目について知るための有効な手段はほとんどありません。 以上のことから,地震後の建築物の機能性を維持,または損傷した部位の機能を回復させることで,地震後すぐに使用できる建築物の実現が望まれています。
そこで建築研究所では,設計者がユーザと対話する中で「地震後の機能を維持する,または機能を回復させる」高い耐震性能をもつ建築物を実現するための評価システムを開発に関する研究を行ってきました。 本研究は,設計者がここで開発する評価システムを利用して,地震後に建築物の機能性を回復するために要する費用や時間,地震後に起こる不具合事象といった情報を基に,地震後のシナリオを建築物の耐震性能として表示し,ユーザの求める耐震性能をもつ建築物を実現できることを最終目標としており,2011年度までの研究では,まずその評価システムの土台作りとして,①評価システムフローの提案とそのフローを用いた試評価の実施,②評価実施の際に必要となるデータベースの構築手法の提案,③評価結果をユーザに伝えるための表現手法の検討に取り組んできました。
このホームページでは,特に2007(平成19)年度から平2011(平成22)年度までに検討しました内容の中から,「機能維持早期回復に関する評価体系」をご理解頂くことを目的とした資料を公開しています。例えば,「データベースを用いた評価事例の紹介」,「データベース構築の考え方」,「新たな耐震性能表示手法の事例」について示しています。またこれらの検討成果について2011年1月末に報告会を開催しており,そこで議論された内容についても同様に公開しています。ただし,「データベースそのものの公開」については,現在その利用方法について精査し,かつ収集したデータを整理している段階にありますので,それらが完了した後に公開する予定(2012年度公開予定)です。ご了承いただきますようお願いします。